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Ⅰ 問題意識

サイバー犯罪対策規定は将来の技術発展に対応するため、その規定文言がかなり抽象的に、ないしはより包括的になることがある1)。こうした抽象的な文言を持つ刑事立法が不明確ゆえに憲法違反とされないのであれば、規制範囲を解釈で明確化することが重要な課題となる。¶001

ここで、明確な解釈が必要だ、というだけなら簡単であるが、その実践は必ずしも容易ではない。サイバー犯罪対策規定は比較的新しい規定であって、判例の積重ねも学説における解釈論上の争いも多くないことがある。解釈の指針自体がわかりにくい場合には、そもそも解釈自体も難しいから、そのような現象が起きやすい。しかし、解釈が固まらないと規制範囲の外延を論理的に画定しにくくなる。こうした状況は、法適用をされる一般人にも、法適用者に対しても、よいものとはいえない。¶002