事実

本件で問題とされているのは、老人ホームの准看護師をしていた被告人が、①同僚のAにひそかに睡眠導入剤を摂取させ、自動車を運転して帰宅するよう仕向け、自動車を運転走行中のAを仮睡状態等に陥らせ、A車を対向車線に進出させ、対向進行してきたBが運転する自動車に衝突させ、Aを死亡させるとともに、Bに傷害を負わせ(第1事件)、②その数カ月後、同僚のC及びその夫のDにひそかに睡眠導入剤を摂取させ、Dに自動車を運転してCを同乗させて帰宅するよう仕向け、自動車を運転走行中のDを仮睡状態等に陥らせ、D車を対向車線に進出させ、対向進行してきたEが運転する自動車に衝突させ、C、D、Eに傷害をわせた(第2事件)事案である。Aに対する殺人罪、B、C、D及びEに対する殺人未遂罪として起訴され、第1審では、第1事件及び第2事件の実行行為性と殺意等が争われたが、いずれも認められて有罪とされ(千葉地判平成30・12・4刑集75巻1号83頁)、被告人が控訴したところ、控訴審は、対向車両を運転していたB及びEに対する未必の殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとして破棄し、第1審に差し戻した(東京高判令和元・12・17刑集75巻1号102頁)。これに対し、検察官、被告人双方が上告した。