本書は、著者が1998年から2016年までに公表してきた16編の論説を集めた論文集である。論文集と言っても、書名にも現れているとおり、そこには商法の法制史的な視点という一貫したテーマが存在している。

これまでの商法分野における法制史的研究と言えば、明治32年の現行商法の成立過程を中心としたものが多い。それに対して、本書は、これまでの先行研究があまり着眼しなかった点を対象としている。具体的には、第1編ではロェスレル草案の起草から明治23年の旧商法の制定までを扱い、第2編ではその旧商法の施行をめぐる商法典論争を扱っている。もっとも、本書も現行商法の成立過程も扱っているが、第3編で焦点を当てているのは、日本民法典の父とされる梅謙次郎の商法学者としての一面である。続く第4編は、最近の法改正を契機に変化が生じた「社団」性及び株主による差止請求制度について、法制史的な面から新たな意義を検討している。最後の第5編は、本書の中でも最多の5本の論文が収められており、そこではロェスレル草案が現在の我が国におけるコーポレートガバナンスに影響を与えていることを明らかにしている。