ドイツ連邦憲法裁判所第一法廷は、2021年3月24日、気候変動防止にとって歴史的な気候保護決定(BVerfGE 157、30)を下した。政治に対して気候変動防止を命じるないし促す裁判所の動きは、世界的に活発化している。ドイツ連邦憲法裁判所は、今回の決定でオランダとアイルランドの最高裁判決を繰り返し引用しており、本決定もこの流れに連なるものといえよう。

2015年に締結されたパリ協定では、「世界平均気温の上昇を産業革命前の水準よりも明確に2℃以下に、できる限り1.5℃に抑える」という気温ベースの目標(パリ目標)が設定された(2条1項a)。これを受けて、ドイツでは2019年に連邦気候保護法が制定され、パリ目標への準拠と2050年までの気候中立の追求が規定された(1条)。そこで同法3条1項では、温室効果ガスの排出量を2030年までに、1990年比で55%削減するという目標が設定された。さらに同法別表2と結びついた4条1項で、2030年までの各年に排出可能な温室効果ガス量が産業部門別に定められた。これに対して、ドイツの若者等は、気候保護法の削減数値が不十分であること等を非難し、憲法異議(主観的権利保護手続)を提起した。連邦憲法裁判所は環境保護団体の訴えを却下し、これが民衆訴訟ではなく、異議申立人の基本権に対して直接の干渉が生じていることを強調している。