Ⅰ. はじめに

スタートアップ企業をめぐっては、企業価値の非連続的かつ急激な成長1)という特有の問題に起因して、起業家(創業者)と投資家との間のみならず、複数ラウンドの資金調達に当たり投資家(株主)間でも利害状況が異なるという特徴があり2)、株主間の慎重な利害調整が必要となる。本稿では、こうした利害調整の手段として近年注目を集めている種類株式に着目し、スタートアップ投資の場面およびスタートアップ企業の新規上場の場面における種類株式の利用について説明する。まず、本稿では、スタートアップ投資の場面における種類株式の利用につき、そのメリットやわが国における実際の利用状況などを取り上げる。その上で、本稿では、米国のIT系スタートアップ企業で利用が多いとされる3)複数議決権株式(1株当たりの議決権数に違いのある複数の種類の株式)の新規上場について、わが国における利用例および米国における近時の学説上の議論を紹介しつつ、検討を試みる。