債権者保護

濫用的会社分割における「害すること」の解釈

759条4項等における「害すること」は、民法424条1項の「害すること」と同一に解釈することは可能か。債権法改正により民法上の詐害行為取消権は改正されたが、この改正により、759条4項等の「害すること」の解釈に変更を要する点はあるか。

藤田組織再編関係の最後として、濫用的会社分割の規制について考えたいと思います。平成26年改正で設けられた濫用的会社分割に関する条文には承継会社・設立会社に承継されない債務の債権者を「害すること」という要件が設けられています(759条4項・761条4項・764条4項)。この改正がなされる前に出された最高裁平成24年10月12日判決(民集66巻10号3311頁)が会社分割にも民法の詐害行為取消権の適用があるとしたのですが、759条4項等にいう「害すること」という文言は、当時の民法424条の詐害行為取消権と同じであり、立案担当者はその内容は基本的に同様であると説明していました(坂本三郎編著『一問一答 平成26年改正会社法〔第2版〕』〔2015年、商事法務〕345頁)。その後民法が改正され424条の規定が大きく変更されましたが、その際に、濫用的会社分割の規定は修正されておりません。このため仮に平成26年改正当時は759条4項等にいう「害すること」が民法上の詐害行為取消権と同じ内容を想定していたとしても、その後民法の条文文言とは異なる以上、民法上の詐害行為取消権とは内容が変わってくることになるのか、あるいは文言の変更はないものの759条4項等も民法の改正に整合的に解釈すべきかといったことが問題になります。ちなみに立案担当者は、「会社法759条4項等の請求権は、詐害行為取消権とは異なり、総債権者のために責任財産を保全するための権利ではなく、両者はその趣旨を異にするものであること、および同項等の請求権について、破産法上の否認権との不整合が生じているという事情も認められなかったこと」から、会社法は改正しなかったと説明しています(堀越健二ほか「民法(債権関係)改正に伴う会社法改正の概要」商事法務2154号〔2017年〕13頁)。この説明に説得力があるかということ自体1つの問題ですが、その説得力とは別に、民法の改正の影響をどう考えるかは問題になり得ます。皆さん、どうお考えでしょうか。