社債

Ⅳ. 社債管理補助者の費用・報酬の負担

社債管理補助者が行う業務のうち、社債の未償還残高の10分の1以上を保有する社債権者からの請求を受けて行う社債権者集会の招集に係る費用について、発行体に資力がなく負担できない場合に誰が負担すべきか。

藤田次は社債管理補助者の費用・報酬の負担です。具体的には、社債の未償還残高の10分の1以上を保有する社債権者からの請求を受けて行う社債権者集会の招集費用について、発行体に資力がなく負担できない場合に誰が負担すべきかという設問です。717条3項1号は社債管理補助者が社債権者集会を招集できると規定しているだけですので、費用も出ないような状況の下では社債権者集会を招集しないという選択肢はあるでしょう。しかし設問は、そういう状況で社債管理補助者があえて自分の費用で招集して、例えば社債権者等に求償することはできるのかということです。あるいは招集するときの条件として費用の求償を約束した上で招集することはできるかといったことも問題になるかもしれません。前提として、実務的には、こういう場合にはそもそも社債権者集会を招集するのでしょうか。また招集するとすればその費用はどのような扱いなのでしょうか。平時において社債権者から社債権者集会の招集の請求があった場合は、発行体が費用を負担(概算額を前払い)することが適当と考えられているようです(日本証券業協会社債市場の活性化に向けたインフラ整備に関するワーキング・グループ「社債管理補助者制度に係る実務上の対応について(「社責管理補助者制度に関する実務検討部会」報告)」〔2021年6月16日〕22頁参照)。なお、昭和25年改正前は、少数社債権者の招集権の発動によって招集された集会の費用については、濫用を顧慮して集会の決議で招集社債権者の負担とすることができたのですが、社債権者がこのような経済的負担をおそれて招集を躊躇することがあり得るという理由から、この規定は削除されたようです(鴻常夫『社債法』〔有斐閣、1958年〕186頁)。