Ⅰ.はじめに

時代による社会の変化によって、憲法の解釈ないしその規範内容が変化することはありうるのか? もしあるとして、その限界はどこに見出されるのか? この問題ほど、世界中の憲法学者を魅了し、かつ、悩ませてきたテーマはないだろう。

この点、憲法変遷に懐疑的な日本憲法学の通説によれば、時の経過による規範内容の変化は一般に否定される、というのがすぐに思いつく解答ではないだろうか1)。しかし、憲法解釈の一般論として、厳格な文理解釈を行い、先例拘束性を厳格に解する立場が支配的かと問われれば、決してそうではない。むしろ、「新しい人権」の議論に代表されるように、憲法学の通説的立場では、柔軟な解釈を通じた憲法の創造的発展は想定され、かつ、許容されているといってよさそうである。