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事実

知事A(処分庁)は、X(審査請求人)に対し、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律29条1項に基づく入院措置の処分(以下「本件処分」という)を行った。Xは、本件処分に対してY(厚生労働大臣・審査庁)に審査請求を提起した。¶001

これに対しYは、審査請求の対象を本件処分の審査請求提起時点までの部分に限定し、当該部分についてのみ適法性及び妥当性を検討し、本件審査請求を棄却すべきであるとして行政不服審査会に諮問した。Yが審査請求の対象を限定した理由は次の通りである。ⓐ行政不服審査法(以下「行審法」という)1条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(以下「処分」という)についての審査請求の違法性・不当性の判断の基準時(以下「基準時」という)は、「一般的には処分時と解されている」が、「本件処分は継続的性質を有する」ことから、「本件処分の決定時のみでなく、その後の入院も含めた部分を本件審査請求の対象とした」。ⓑ「しかし、審査請求後の任意の時点までを『審査請求に係る処分』とみなす」と、「その時点は、行政側の恣意により決定されることや、本人の意思と異なる時点となる可能性があり、法的安定性を害する」。ⓒ「審理中にも『審査請求に係る処分』が進行し続ける」と「審理が終結せず、入院措置の処分が解除されるまで永遠に裁決できない」。ⓓ「このため、Xは、処分時(入院措置の開始時)から審査請求提起時点までの違法性・不当性を主張して、本件審査請求を提起したものと解し、入院措置の開始時のみならず、審査請求提起時点までにおける違法性・不当性も本件審査請求の対象とした」。ⓔ「このことは、取消訴訟の訴訟物は、訴えの変更がない限り、最初から最後まで変わらないこととされていることとも整合する」。¶002