Ⅰ.はじめに

「共存の国際法」と「協力の国際法」のそれぞれの本質的特徴を何に見出すかは人によって違うだろうが、1つの大きな特徴は、それぞれの国際法が担う機能の「消極性」と「積極性」にある1)。すなわち、「共存の国際法」と呼ばれる伝統的国際法は、国内統治を各国の専属的管轄事項(国内管轄事項)とし当該事項への他国の介入を禁ずる規範(不干渉原則)を中心として、もっぱら国際紛争の回避という消極的な機能を営んだ2)。国際紛争の回避を第1の目標にするならば、国際法としては、各国の国内統治についてはなるべく何の規律もしないほうがよい。規律の対象にすれば、規律の対象となっていることが原因で紛争が生じかねないからである。しかし、国家間の協力がなければ解決し得ない諸問題、しかも、各国の国内統治に関わるような諸問題(人権保障、地球環境保護など)が出てくると、事情は変わってくる。そうした諸問題の解決のためには、国際法は、従来各国の国内管轄事項であった事項についても、規律を及ぼしていかざるを得ないからである。国際紛争の発生というリスクがあってもなお、諸国の共通利益の実現のために国際法の規律を及ぼしていくという現代国際法の「積極性」を表現したのが、「協力の国際法」という言葉である。「共存の国際法」から「協力の国際法」へというのは、前者が後者によって完全に置き換えられたということではなく、現在では後者の比重が増えているということである。