Ⅰ. はじめに

OECD/G20のBEPS包摂的枠組み(以下「BEPS包摂的枠組み」)から2021年10月に公表された大枠合意1)では、市場国における新課税権の基礎となる新たなネクサスとしての売上金額に、GDPが小さな国には低い金額基準を設けるほか、二重課税に係る紛争解決に関しても、途上国には、義務的・拘束的な解決方法に代えて、選択的なものとするなど、新興国・途上国へ特に配慮した内容が随所に見られる。

この背景には、新興国・途上国はBEPS包摂的枠組みにおける検討に積極的に参加する一方で、アフリカ税務行政フォーラム(African Tax Administration Forum、以下「ATAF」)、国連の国際租税協力専門家委員会(Committee of Experts on International Cooperation in Tax Matters、以下「国連租税委員会」)、国際通貨及び開発案件に関する24カ国政府間グループ(Intergovernmental Group of Twenty-Four on International Monetary Affairs and Develop­ment、以下「G-24」)などの新興国・途上国のフォーラムでも並行して独自の対応策の検討を進め、あるいは、積極的にフォーラムの意見を発信していることが大きく影響していると考えられる。先進国主導のフォーラムでは、新興国・途上国の個々の主張は反映されにくい面があるため、新興国・途上国のフォーラムでその主張を打ち出すことで、BEPS包摂的枠組みにおける議論への影響力を強めた結果と言えるのではないかと思われる。