Ⅰ はじめに──誹謗中傷に対する法的制裁強化の流れと本稿の目的

インターネット上での誹謗中傷が大きな社会問題とされるようになり1),それへの対処として2),侮辱罪に対する法定刑が加重された。これに対する批判の具体例が,日弁連による「侮辱罪の法定刑の引上げに関する意見書」であるが,そこにおいても誹謗中傷への法的対処は重視され,「民事上の救済手段の一層の充実」の必要性が説かれている3)。そのため現代社会においては,誹謗中傷を理由とする責任を肯定する声が高まっていることを見て取ることができる4)。そして,不法行為法において責任成立が肯定される事例の拡大や,慰謝料額の増額を原理的に妨げる要因は存在しない。