Ⅰ. はじめに

侮辱罪(刑231条)の法定刑を、現行のそれ(拘留1)又は科料2))に、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金を追加する法案(刑法等の一部を改正する法律案)が、国会で可決・成立した3)。この法案は、侮辱罪を巡る現状を踏まえて構想されたものである。従来、侮辱罪の認知及び訴追件数は少なく、そのため、有罪判決で終結した事件も少なかった。その後、インターネット上でのメッセージのやり取り(SNS)等により、特定人に対する誹謗中傷が容易かつ瞬時に大量になされる(「炎上」)状態が多発するに至り、当該特定人が精神的に追い込まれて自殺する事件も起きた。こうした事態を踏まえ、侮辱的行為に対する罰則のあり方が再検討され、法案が国会に提出されるに至ったのである。