Ⅰ はじめに
法の適用に関する通則法(以下、「通則法」とする。条文のみで表記する場合には同法とする)17条から22条は不法行為の準拠法決定に関する規定である。このうち、本稿で検討対象とする21条は、「不法行為の当事者は、不法行為の後において、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力について適用すべき法を変更することができる」(本文)とする規定であり、17条から20条の法定ルールを通じて適用が導かれるはずの法の変更を、当事者の合意により認める規定である1)。通則法の制定過程においては、準拠法選択の有効性及び準拠法の事後的変更について、7条以下の法律行為の準拠法と同様の規律にすることを明示する案も示されており(法制審議会国際私法(現代化関係)部会「国際私法の現代化に関する要綱中間試案」〔平成17年3月22日〕〔以下、「中間試案」とする〕第7・5(1))、より詳細な規定となる可能性もあった2)。しかし、法律行為の準拠法についての有効性の判断にかかる規定は立法化が見送られ、その事後的変更の規定は9条に置かれたものの、中間試案が想定していた参照規定は置かれず、21条本文は上記のごとくシンプルな条文となった。なお、中間試案に対するパブリックコメントでは不法行為において当事者自治を認めることによる訴訟遅延の懸念も指摘されていた3)が、この点への対応はなされなかった。かくして、不法行為準拠法の変更合意の態様4)や有効性の判断基準、訴訟における合意の時的制限の有無等の問題は明文化されておらず21条自体の解釈問題となった5)。また、あくまで21条は不法行為後の合意のみについての規定となっており、反対解釈として事前の合意について一切認めないとするのか、それとも、事前の合意のルールは規定が欠缺していると解すべきかという問題も残された6)。¶001