はじめに
法の適用に関する通則法(以下「通則法」という)11条・12条は、当事者による準拠法選択を認めながら、消費者については常居所地法、労働者については労働契約の最密接関係地法による保護を確保することにより、当事者自治と弱者保護との調整を図っている。もっとも、11条1項及び12条1項が、消費者または労働者による特定の強行規定の適用を求める意思表示を保護の要件としたことについては、立法時から、弱者側に過度の負担を課し、その保護を妨げるおそれがあるとの批判も示されてきた。通則法施行後約10年余りの裁判例を対象とした検討では、11条1項または12条1項に基づき、消費者または労働者が自己に有利な強行規定の適用を求める事例がすでに複数みられ、意思表示要件が裁判実務上大きな支障となっているとは認められないと評価された1)。もっとも、公表裁判例からは、意思表示要件を認識しないまま当該主張がされなかった事案を把握するのは困難であるため、これらのみから同要件が弱者保護を妨げていないと断定することはできない。とはいえ、11条1項・12条1項に基づく主張がされた裁判例はその後も蓄積しており2)、こうした法的構成が裁判実務上繰り返し用いられていることからすれば、少なくとも現在までのところ、立法時に指摘された懸念が顕在化しているとは言いがたい。¶001