Ⅰ はじめに:当事者による選択がない場合の準拠法
法の適用に関する通則法(以下、「通則法」とする)への改正前、法律行為(主として契約)の成立および効力は、当事者による準拠法の選択がない場合、行為地法(契約であれば締結地法)によるとされていた(法例7条2項)。これに対しては、一律な行為地法への連結では、適切な準拠法決定がなされないとの批判が強かった1)。そこで、通則法は、当事者による準拠法の選択がない場合、当該法律行為の当時において最も密接な関係がある地の法(最密接関係地法)によるとした(法適用8条1項)。法律行為には様々な類型があるため、準拠法を柔軟に決定し個別妥当性を追求しうるようにしたものである2)。しかし、最密接関係地は、法律行為を取り巻く諸事情を考慮して判断するものであることから、判断基準が抽象的にすぎ、明確性に欠ける。そこで、予測可能性を補うため、同条2項が、「特徴的給付の理論」を採用し、最密接関係地法を特徴的な給付をなすべき当事者の常居所地法と推定する3)。例外的な推定規定は、不動産を目的とする法律行為や労働契約についても、存在する(法適用8条3項、12条2項・3項)。しかし、本稿は、特徴的給付の理論を採用した通則法8条2項が、同条1項の最密接関係地法との関係で実際に機能しているかを考察の対象とし、他の推定規定は扱わない。¶001