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Ⅰ M&Aとコーポレートガバナンス

Q₁

M&Aにおいて、具体的にどのような場面でコーポレートガバナンスの考え方を意識すべきでしょうか。

¶001

A₁

M&Aの、特に企業買収のプロセスにおいては、買収の効果を最大化する観点で、様々な場面においてコーポレートガバナンスの考え方が重要となります。企業買収は、検討フェーズ、協議フェーズ、買収実行後の統合(PMI)フェーズ、そして将来的な投資資金の回収といったエグジットのフェーズに至るまで長期間にわたる取組みといえますが、特にコーポレートガバナンスの考え方がポイントとなる局面として、①買主が、自社の事業ポートフォリオ戦略を念頭に一定のリスクを有する買収を行うか判断する場面、②売主や買収対象となる対象会社側が、買収提案を受けた場合において賛同の是非を判断すべき場面(特に上場会社の場合)、そして③買主や対象会社が、買収実行後のPMIにおいて経営・管理体制を構築する場面が挙げられます。

¶002

東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます)の策定(2015年)以降、日本でもコーポレートガバナンス(以下「CG」といいます)に対する意識が年々高まっています。折しも本稿の執筆時点で、3度目のCGコード改訂に向けた議論が進んでいますが、このことからも分かるとおり、CGの考え方は時代の要請に応じて変化し続けるものです。企業法務に携わる関係者は、常にその時代のCGの考え方を念頭に置きながら、様々な課題に向き合うことが求められます。¶003

CGの考え方は本連載のテーマであるM&Aにも関わるものであり、その中でも企業買収は、CGの考え方を意識すべき局面の1つといえます。企業買収の時間軸に沿っていえば、特に、①買主候補による買収検討段階、②買主候補による買収提案段階、③経営統合(PMI:Post Merger Integration)段階の3つが、CGの考え方との関係において重要と思われます。具体的には、以下の図表1のようにまとめられます。¶004

図表1 企業買収においてCGの考え方がポイントとなる局面
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図表1に示したとおり、各段階において、売主、買主、そして対象会社それぞれの視点から、CGを意識した買収に関する検討が求められることとなり、それらのバランスがとれたとき、買収はよりスムーズに進むものと思われます。¶005

このうち、特にPMI段階では、買収後の対象会社の企業価値をどのように最大化していくかというPMIの「ビジョン」を、CGの考え方を踏まえながら描くことが重要です。しかし、「言うは易く行うは難し」というように、実際にはPMIの実行フェーズにおいて悩ましい問題に直面することも多いと感じます。スムーズなPMIの実現のためには、特に買主の視点からは、買収を実行する前段階からPMIのポイントを押さえておき、買収関連の契約にも必要な仕組みを置くなどしつつ、売主や対象会社側との協議を進めることが鍵となります。¶006