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Ⅰ はじめに

2025年7月23日、国際司法裁判所(ICJ)は、「気候変動に関する国家の義務」に関する勧告的意見を付与した1)。本意見は、バヌアツをはじめとした小島嶼国が主導し、最終的に130か国以上の共同提案によって2023年3月29日に採択された国連総会決議2)による諮問に応えたものである。¶001

諮問内容は以下のとおりである。¶002

国連憲章、自由権規約、社会権規約、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、パリ協定、国連海洋法条約(UNCLOS)、相当の注意(due diligence)義務、世界人権宣言上の権利、環境に対する重大な損害防止原則、海洋環境の保護及び保全の義務を特に考慮し、

  1. (a) 国家並びに現在及び将来世代のために、温室効果ガス(GHG)の人為的排出から気候系及び環境のその他の部分の保護を確保する国際法上の国家の義務とは何か。

  2. (b) 以下の対象に対して、国家の作為及び不作為によって気候系及び環境のその他の部分に重大な損害を発生させた場合、これらの義務に基づき、国家にどのような法的効果がもたらされるか。

    1. (i) 国家(特に、気候変動によって特別の悪影響を受ける小島嶼開発途上国など)
    2. (ii) 気候変動の悪影響を受ける現在及び将来の世代の人民並びに個人3)
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