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Ⅰ はじめに

近年、AI技術を用いて個人の健康や医療に関連する情報(以下「医療情報」という)を活用して製品やサービスの研究開発等を行おうとする動きが多く見られる。大量の医療情報をインプットすることにより病名診断等をサポートするAIを研究・開発し、開発されたAIを搭載したプログラムを製品やサービスとして流通させるケースもその一例である。この場合、法規制の観点から重要な岐路となるのが、当該プログラムが医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律上の「医療機器」に該当し、同法の適用を受けるか否かという点である。同法の適用を受けることになる場合、事業者による製造販売承認の取得が必要になるほか、その管理や流通において様々な規制が課せられることになる。また、AIを用いた製品開発を行うにあたっては、個別法や業法だけでは完全に対応できない、AI倫理に関する問題も生じる可能性がある。具体的には、AIが事実と反する内容を生成するハルシネーションや、性別・人種・年齢などによる不当な判断や差別を無意識に再生産してしまい、公平性が損なわれるバイアス等の問題である。医療分野においてAIを活用する場合、仮にAIが誤った結果を示した結果、人の命や健康に関わることもあるため、そのリスクはより大きな問題となり得る。このようなAIリスクの内容・影響度や講じることができる対策は事業者によって異なるため、各事業者が、AIガバナンスを構築して、リスクベースアプローチでAIリスクを把握・管理することが期待される。¶001