Ⅰ
本書は、2020年に逝去された森英樹・名古屋大学名誉教授(以下、「著者」)の著作集である。著者は評者の恩師でもあるが、以下での評価は、その事実に囚われるものではない。¶001
全体4部(「基礎理論・グローバル化・公共圏」、「議会制・選挙制・政党制」、「人権と『安全・安心』」、「平和主義・改憲問題・憲法運動」)構成で、著者の薫陶を受けた編者(本秀紀、愛敬浩二、大河内美紀)が厳選した27本の論稿が並ぶ。どれも「森憲法学」の代表作だが、とくに公共性・公共圏(第5章~7章)や政党(第11章~13章)に関する研究は憲法学の共通遺産といえるもので、これらの論稿が一書に収められた意義は大きい。編者執筆の「解題」では掲載選外となった重要著作も紹介されており、また、各章の配置順も「森憲法学」の理論的深化の過程を読者が辿れるよう工夫されている。本書が著者の足跡を辿る追悼企画にとどまらず、まさに現在進行中の憲法現象の考察の羅針盤となり得ているのは、論稿自体の力は当然として、こうした編者たちの努力によるところもあるだろう。¶002