山本タイトルは「他人の氏名と商標登録」ということで、まずは氏名商標登録のニーズについて簡単にご報告申し上げまして、その後、最近の法改正(令和5年法律第51号)よりも前にどのような状況であったのか、その次に法改正で、どのような内容の改正がなされたのかについてご説明したあと、これらを踏まえまして、残された検討課題などを見てまいりたいと思います。¶001
Ⅰ はじめに――氏名商標登録のニーズ
山本はじめに、氏名商標登録のニーズについて、簡単にお話しいたします。中川さんもご参加されていたAIPPIの報告書で、ファッション、化粧品、洋菓子の分野の企業4社に対するヒアリング調査がなされ、「デザイナー・クリエータ等の氏名商標を登録するニーズについては、これを肯定する意見が大半であった」とされております。また、「とりわけ、ハイファッション、ラグジュアリーファッションのような業界では氏名商標はニーズがあるというよりも必須であるとの意見があり、業界によっては、強いニーズがあることが確認された。氏名商標のブランド戦略における位置付けとしては、特に、ファッション業界については、ブランド戦略上、氏名商標は必要不可欠で、一番大事なものである、事業において必須であるといった意見があり、氏名商標の重要性が確認された」といったことも報告されているところです1)。¶002