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Ⅰ はじめに

インターネット上でなされる匿名の情報発信によって、何らかの権利侵害が発生した場合、被害者が発信者に対する権利を行使する前提として発信者の情報を入手するための手段が、発信者情報開示請求である。発信者情報開示請求は、実際に権利侵害を生じさせる通信(権利侵害通信)を対象に、その通信過程に残った情報を対象に行われるのが原則である。¶001

しかし、XやInstagramなどのSNSを中心に、個別の権利侵害通信について記録を取得せず、アカウントへのログイン記録のみを管理する「ログイン型」と呼ばれるウェブサイトの利用がここ10年来広がっている。ログイン型サイト上での権利侵害について、発信者を特定するためには、アカウントへのログイン通信を発信者情報開示の対象とする以外に方法はなく、旧プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)下の実務では、ログイン通信に関する発信者情報開示請求が大きな論点となっていた。¶002