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事実の概要

X(原告・控訴人・上告人)の先代Aは、昭和6年1月31日に、Y生命保険会社(被告・被控訴人・被上告人)との間で、自らを被保険者とする保険金額2000円、保険金受取人をXとする終身生命保険契約を締結した。ところが、Aは本件契約締結前十数年来精神病に罹患しており、同年6月10日この精神病による精神障害に基因する縊死を遂げるに至った。¶001

Y会社は、Aが既往症を告知しなかったのは告知義務違反であるとして契約を解除し、保険金の支払を拒絶した。そこでXはY会社に対して保険金請求の訴えを提起したが、一審・原審ともにY会社の契約解除を有効としたため、Xはつぎの点を主張して上告した。すなわち、B(Aに対して本件保険の勧誘をしたY会社の社員)は、永年Aと同じ村に居住していたことから本件保険契約締結当時Aの既往症の事実を知っていた。そして、Y会社は代理人Bをして契約を締結したものであるから、その代理人Bの意思表示の効力がAの既往症の事実を知っていたことにより影響を受くべき場合には、その事実の有無はその代理人についてこれを定むべきことは民法101条に明記するところである。しかるに、原判決はこの解釈を誤り、Bが契約当時Aの既往症の事実を知っていたことをもってY会社の了知とはなし得ないとしたのは違法である。¶002