事実の概要
X(原告・控訴人=附帯被控訴人・上告人)が自動車を運転中にY(被告・被控訴人=附帯控訴人・被上告人)運転の自動車と衝突する事故(以下「本件事故」という)が発生した。本件事故によりXに生じた損害額は341万円(1万円未満四捨五入。以下同じ)、Xの過失割合は3割である。本件事故当時、Xは人身傷害条項のある普通保険約款(以下「本件約款」という)が適用される自動車保険契約(以下「本件契約」という)の被保険者であったため、保険者であるA社に人身傷害保険金を請求した。Xは、自ら自賠責保険に直接請求する方法もある旨の説明を受けた上で、A社が自賠責保険による損害賠償額の支払分を含めて人身傷害保険金を一括で支払うことを承諾した。Xはまた、本件契約に基づく人身傷害保険金の受領に際し、A社に「保険金のお支払いについての協定書」(以下「本件協定書」という)を提出した。本件協定書には、XのYに対する損害賠償請求権は、自賠責保険への請求権を含め、受領した人身傷害保険金の額を限度としてA社に移転することを承認する旨の記載があった。Xは本件事故にかかる損害につき、A社から111万円の支払を受けた。その後、A社は自賠責保険からXに対する損害賠償額の支払として84万円(以下「本件自賠金」という)を受領した。本件の争点は、XのYに対する損害賠償請求額からA社が受領した本件自賠金相当額を全額控除することが認められるかである。¶001