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 事実の概要 

本件は、交通事故により傷害を受けたX(被害者─原告・控訴人・上告人)が、Y(加害者─被告・被控訴人・被上告人)に対し、民法709条または自賠法3条に基づき損害賠償を求め、その賠償額の範囲が争われた事案である。¶001

Xは、自動車保険・人身傷害条項の被保険者でもあったため、事故後まもなく、人身傷害保険金を請求し、この際、Xは、保険会社(以下、人傷社)から、自ら自賠責保険に直接請求するという方法がある旨の説明を受けた上で、人身傷害保険金について、人傷社が自賠責保険による損害賠償額の支払分を含めて一括して支払うことを承諾した(以下、人傷一括払合意)。本件人身傷害保険約款所定の算定基準に従い算定されたXの損害額(209万8418円)は、人身傷害保険金額の限度内の金額であり、Xは、「保険金のお支払いについての協定書」(以下、本件協定書)を提出した上、上記の人傷基準損害額からXが受領済みの既払額を控除した残額と同額の支払金(以下、本件支払金:111万0181円)を受領した。なお、Xの過失相殺前裁判基準損害額は、341万1398円であったため、人傷社が代位取得できるXの債権の範囲は8万6762円の範囲であったが、人傷社は、その後、Yの自賠責保険からXの傷害による損害賠償額の支払として83万5110円(以下、本件自賠金)を受領した。¶002