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事実の概要

X(原告・被控訴人)は、平成8年ころY(被告・控訴人)に雇用されたが、平成19年6月ころうつ病を発症し、同月22日以降就労不能となった。Xを雇用するYはXを政府管掌保険と厚生年金に加入させていたが、標準報酬月額に所定の保険料率を乗じて算出される健康保険および厚生年金の保険料額につき、実際よりも少額(Xの平成16年度の標準報酬月額は24万円だったところ22万円、同17年度は19万円だったところ18万円、同18年度は18万円だったところ12万6000円、同19年度は17万円だったところ12万6000円)に申告した。また、YはXの傷病手当金支給申請書を社会保険事務所に提出せず、Xに返却もしなかった。このためXが、①Yが健康保険および厚生年金の保険料額算定の基礎となる標準報酬月額を実際よりも少額に申告していたため、Xが私傷病に罹患した場合の傷病手当金受給権や将来受給しえたはずの年金受給権を侵害した、②Yが健康保険傷病手当金申請手続に協力する義務を怠ったため、傷病手当金請求権が時効により消滅し、本来受領できたはずの傷病手当金を受領できなかったと主張して、債務不履行ないし不法行為に基づき、上記傷病手当金および慰謝料およびこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年7月15日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。¶001