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Ⅰ はじめに

温室効果ガス(GHG)の排出による気候変動は海洋にも大きな影響を与えており、海洋温暖化、海面上昇、及び海洋酸性化を引き起こしている1)。中でも、海面上昇は、小島嶼国にとって国土の消滅を意味する重大な問題である。そこで、2022年に「気候変動と国際法に関する小島嶼国委員会」(COSIS)2)が次の2点に関する勧告的意見を国際海洋法裁判所(ITLOS)に要請した。(a)気候変動に起因する、又は起因する可能性のある有害な影響(人為的な〔anthropogenic〕GHGの大気への排出によってもたらされる海洋温暖化、海面上昇、及び海洋酸性化によるものを含む)に関して、海洋環境汚染を防止し、軽減し及び規制するための国連海洋法条約(UNCLOS)締約国の具体的な義務は何か。(b)気候変動の影響(海洋温暖化、海面上昇、及び海洋酸性化を含む)に関して、海洋環境を保護し及び保全するためのUNCLOS締約国の具体的な義務は何か。¶001