FONT SIZE
S
M
L

Ⅰ 目的審査による違憲判断

大法廷は、裁判官全員一致の判断で、平成8年改正前優生保護法(以下「旧優生保護法」「法」という)の規定する優生手術に関する諸条項を憲法13条・14条1項に違反すると判断した1)。立法目的を審査し、その正当性を否定するものであり、目的審査による初めての法令違憲判決だ。¶001

仙台訴訟を嚆矢として提起された旧優生保護法違憲国賠訴訟(以下「本訴訟」という)において、優生条項が憲法13条・14条1項等に違反するとした点で各高裁判決は合致しているが、国側が除斥期間の経過による損害賠償請求権の消滅を専ら主張し、優生条項の立法事実の合理性を殆ど主張してこなかったためか、その結論は、ごく簡潔に示されている。つまり優生政策は、我々の社会の良識にとって、ある時期以降、それほどタブー視されている。しかし「旧優生保護法がかつては合理的なものだと考えられたとすれば、その思考がなお現存していないか確認するためにも、同法の規定が何ゆえ違憲であるのかを精確に検討」しておく必要がある2)¶002