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本書の旧版が刊行されたのは、今から26年前の1998年6月である。編集にあたられた田宮裕教授は、そのはしがきの冒頭で、「いま国民の間にもっとも強い関心をよんでいる法律……はと問われれば、それは少年法だという答えがかえってこよう」と述べておられる。思い起こしてみると、当時の状況はまさにそう評価するにふさわしいものであった。1983年をピークとして減少し続けていた少年による刑法犯の検挙人員は、1995年を境に再度増加に転じ、1998年はなお増加が続いている最中であった。また、1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめとする少年による凶悪重大事件が立て続けに起こったほか、「いきなり型非行」など、それまでとは性格が異なる少年非行が増加しているという指摘もなされた。さらに、この時期に、非行事実の有無が争われたいくつかの事件で、裁判所によって判断が分かれるという事態が生じ、否認事件における少年審判手続の構造的な問題点も指摘されるようになった。こうした状況を受けて、少年法の改正に向けた機運が高まり、本書の旧版が公刊された直後の1998年7月には、法務大臣から、法制審議会に対し、少年審判における非行事実認定手続の改善に係る諮問が発せられた。法制審議会において少年法の改正が議題とされたのは、1977年に中間答申が出されたまま改正論議が頓挫して以来、実に20年ぶりのことであった。

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