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自由で公正な社会の実現を目指してきた民主主義国家において、種々の方法を用いた外国からの干渉が深刻化している。最近の世論調査によると、欧州市民の約8割が民主主義体制に対する外国の干渉は対処すべき重要な問題であると考えているという。フランスでも、サイバー攻撃や偽情報の拡散など外国勢力による干渉が政治経済に重大な影響をもたらしているとの認識が共有されている。¶001
議会下院の議員調査団が2023年11月に発表した報告書によると、地政学的緊張やデジタル化の進展を背景として外国からの干渉が増加しており、産業スパイや政治エリートへの接近といった古典的なものから、サイバー空間を利用した現代的なものまでその態様は様々であるという。当該外国勢力としては、ロシア、中国、トルコ、イランといった国名が挙げられるほか、2024年5月に発生した仏領ニューカレドニアでの暴動は、アゼルバイジャンによる偽情報を利用した扇動が引き金であったと仏政府は発表している。下院の調査委員会からも2023年6月に報告書が提出されていたが、これらの報告書は外国からの干渉に対するフランスの脆弱性を指摘していた。こうした指摘を受けて、外国の干渉に対処するための法案が2024年2月6日に大統領派の議員によって議会に提出され、同年6月5日に採択された(以下、「本法律」とする)。¶002