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 事実の概要 

日本と韓国との間の慰安婦問題については、2015年12月28日の両国外務大臣の共同記者発表(以下、「2015年韓日合意」という)において、元慰安婦の心の傷を癒す措置を講じるとともに、その措置の着実な実施を前提として、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されること」が確認されているが、韓国人元慰安婦らは、2016年に、日本を被告として損害賠償請求訴訟をソウル中央地裁に提起した(原告を異にする2件の訴訟があり、便宜上、第1事件・第2事件として区別するが、本解説の対象は後者である)。日本政府は、国際法上の国家免除(主権免除)の原則から、これらの訴訟は却下されなければならない旨を韓国政府に伝える一方で、裁判には出廷しなかった。韓国では、国家免除の問題は国際慣習法に従って判断され、大法院1998年12月17日判決以降、外国の主権的行為については免除を認めつつ、非主権的行為については免除を否定する制限免除主義が採られている。¶001