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はじめに

以下では、令和2年11月から令和3年10月までの間における知的財産法に関する裁判例のうち、注目すべき論点が含まれているものを紹介する。事件番号を表示した裁判例は、令和4年2月下旬の時点で、判例集等には掲載されていないが、裁判所ウェブサイトの判例検索システムで事件番号により検索することができる。¶001

Ⅰ 特許法

1 共同直接侵害

大阪地判令和3・2・18(平29(ワ)10716号、知的財産法1)は、発明の名称を「手摺の取付装置と取付方法」とする本件特許に係る本件特許権について、方法の発明の共同直接侵害の成立を認めた事例である。被告製品の取付けにあたり、被告は、被告製品に係る手摺の取付方法の構成a~kのうち、手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工(構成aおよびb)までを行い、その後のガラス取付作業(構成c~k)は、別の施工業者によって施工されており、被告方法の構成のうち、構成a~c、g、hおよびlは、本件発明の構成要件A~C、G、HおよびLをそれぞれ充足するものであった。判旨は、「被告は、被告製品を販売し、被告方法のうち、手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工までを行い、ガラス取付作業は別の施工業者によって施工されている……。/もっとも、証拠……によれば、ガラス取付作業に当たる施工業者は、被告製品を使用して、被告の指定した被告方法により、被告の作業に引き続いて取付作業を行ったものと見られる。この点で、被告とガラス取付作業に当たる施工業者とは、共同して被告方法を実施していたものと評価できる。/したがって、被告は、本件特許権の直接侵害に当たる行為をしていたものと認められる」とした。¶002