((2)より続く)¶001
Ⅴ 使用者の労働法の遵守に影響力を有する第三者企業(承前)
2 使用者の法令遵守に対する親会社や取締役の関与のあり方
(1) 親会社か、親会社の取締役か
土岐これまで、取引関係を通じて使用者による労働法の遵守に影響を与える場合の話をしましたけど、次に、資本関係を通じた場合を考えてみると、取引を通じた場合には労働法規制に関連する議論が行われているのですが、資本関係を通じて労働法の遵守に影響を与える場合というのは、あまり議論されていないようでした。私が会社法の文献を見落としているという可能性もありうるのですけれども、日本の会社法だと、大会社の取締役会に企業集団を対象とする内部統制システムの決定義務(362条4項6号)が入ってきたりするなど、親会社が子会社の法令遵守に影響力を持ちうることに着目した規定が登場していますね。先ほど集団法の話もありましたが、労働法学では、こういった規定を梃子にして、親会社に労組法上の使用者性を、という議論も行われているところです。¶002