事実
X(原告)は映画「天上の花」(以下「本件映画」という)の脚本原稿を執筆し、本件映画の脚本の作成に携わった者であり、Y(被告)は、本件映画の最終脚本の作成に携わった著名な映画脚本家である。Xは、平成25年8月頃から、映画の脚本執筆につきYの指導や助言を継続的に受けるようになり、その過程で、Yから小説「天上の花─三好達治抄─」を原作とする映画脚本(シナリオ)の執筆を勧められ、Yの指導や助言を受けながら、第8稿となる脚本原稿を執筆した(以下、同脚本原稿のことを単に「第8稿」という)。令和3年8月14日、本件映画の製作プロダクションであるAの事務所において、第8稿の映画化に向けての打合せ(以下「本件打合せ①」という)が行われ、第8稿をベースに本件映画の製作を進めることや、第8稿の修正方針が合意された。Xは、令和3年8月16日、本件打合せ①を踏まえて修正した第9稿を作成し、その後、Yは第9稿を修正し、さらに、Xは、Yの指示に従って更に修正した第10稿を作成した。Yは、第10稿を大幅に修正した第11稿を作成し、Xに対してメールで送信したところ、Xは、本件映画の監督であるBに対して、YからBとの打合せ(話合い)が行われる旨聞いたこと、第11稿にはYから知らされていなかった変更が多く驚いており、Xが不満な部分を削除してほしいことを伝えた。令和3年10月14日、Y、Bおよび本件映画プロデューサーは打合せを行い(Xは不参加)、令和3年10月19日、Yは、第11稿を修正した第12稿を作成した(第10稿から第12稿への変更箇所のうち、Xが同一性保持権侵害と考える変更箇所を以下「本件変更」という)。第12稿が決定稿(最終脚本)とされ、令和3年11月1日、第12稿に基づく本件映画の撮影が開始され、令和4年8月に初号試写が行われた。Xは、YがXに無断で第10稿の内容を変更し、Xの著作者人格権(同一性保持権)を侵害したと主張して、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償の支払い、並びに、著作権法115条に基づく名誉回復措置としての謝罪広告の掲載を請求したのが本件である。¶001