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Ⅰ はじめに

2024年6月20日、アメリカ合衆国連邦最高裁判所(以下「最高裁」という)は、2017年トランプ税制改革(The Tax Cuts and Jobs Act of 2017, TCJA)によって、外国法人の少数株主であるMoore夫妻に課された、外国法人が株主に配当せず国外留保している所得への一回限りの強制還流課税(The Mandatory Repatriation Tax, MRT)(内国歳入法典965条)が、連邦議会の課税権に関する合衆国憲法第1編第8節、第9節、第16修正に反さないとの判断を下した(Charles G. Moore, et ux., v. U. S., 602 U. S.__(2024))。本稿では、このMoore事件の背景と、同事件最高裁判決の内容、同判決のアメリカにおける租税政策論議への影響について紹介し、日本における租税法理論との関係性についても簡単に述べる。¶001