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Ⅰ はじめに

EU排出量取引制度(EU ETS)はEUの気候変動政策の中核をなす制度である。EU ETSは温室効果ガスを対象とした初の本格的な排出量取引制度であるが、今も進化を続けており、その後に開始された多くの制度に影響を与えている。¶001

我が国に目を転じてみると、2023年に脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)が成立した。同法には、今後我が国において排出量取引制度を導入することを前提に、2033年度から大規模発電事業者に対して排出枠を有償(オークション)によって割り当てることが明記されている(GX推進法15条)。その一方で、排出量取引制度の具体的な制度設計や導入時期は明記されておらず、法律施行後2年以内に必要な法制上の措置を講ずるものとされている(同法附則11条2項)。現在のところ企業の自主的な参加による排出量取引制度が試行的に運用されているが、法制化された排出量取引制度が2026年度から開始される予定であり、2025年通常国会に法案が提出されることが見込まれている。これを受け、現在我が国においては排出量取引制度の制度設計が急ピッチで行われている。¶002