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事実

本件は、宗教法人であるY(被告・被控訴人・被上告人)の信者であったAがYに献金をしたことについて、X(原告・控訴人・上告人。Aは原審係属中に死亡し、同人の長女であるXがAの訴訟上の地位を承継)が、Yら(Yの信者を含む)に対し、上記献金はYの信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求める事案である。¶001

背景となる事実の概要は次のとおりである。すなわち、Yの下部団体を介してAはYに対して、①複数回にわたる多額の献金、ならびに、②所有土地を売却した代金からの献金を行う一方、③この②の献金額の一部からAは生活費の交付を受けていた。この献金の背景として、④Aは身内に多くの不幸があったところ、⑤病気・事故・離婚等の背景には霊の影響があってこの影響から脱して幸せに暮らすためには献金をして地獄にいる先祖を解怨することなどが必要というYの教理をAは学ぶとともに、⑥Aは上記①②の献金の前後でYの宗教的行事に参加しており、⑦上記①②の献金はYの信者による勧誘で行われた。さらに、⑧Aがこの献金をXに話したことから、⑨XがYに返金を求めることを懸念して、Yの信者の立会いの下で作成された不当利得返還請求や損害賠償請求を行わないとのAの意思を公証人が確認した書面を、Yに提出する形でYとの間で不起訴合意を行うとともに、⑩Aが返金を求めない意思を表明した旨をYの信者がビデオ撮影した。⑪これら①②の献金当時すでにAは80歳前後であり⑨⑩の当時は86歳という高齢であって、さらに、⑫この⑨⑩の当時は単身者であるとともに、⑬この⑨⑩の約半年後にAはアルツハイマー型認知症で成年後見相当と診断された。¶002