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Ⅰ 問題状況

参議院定数配分訴訟について最高裁は、平成24(2012)年と平成26(2014)年において立て続けに、直近の通常選挙時の定数配分規定が「違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態」(いわゆる違憲状態)であったとする厳しい判決を下した。平成26年大法廷判決では、「従来の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、国会において、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって違憲の問題が生ずる前記の不平等状態が解消される必要がある」1)との踏み込んだ説示を行い、国会に対して「選挙制度の仕組み自体の見直し」を通じた較差是正のための立法的措置を強く求めた2)。これを受けて、平成27(2015)年には4県2合区を含む10増10減を内容とする公職選挙法(以下、「公選法」)の改正が行われ、平成25(2013)年通常選挙時に4.77倍であった最大較差は、平成28(2016)年通常選挙時には3.08倍まで縮小した。その結果、平成27年の法改正以降、平成29(2017)年9月27日大法廷判決3)から本稿で主に検討する令和5(2023)年10月18日大法廷判決4)に至るまで、参議院選挙における投票価値の不均衡は違憲状態ではないとする、いわゆる合憲状態判決が続いている。¶001