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はじめに

2023年1月25日、最高裁判所大法廷は、2021年(令和3年)10月31日に実施された衆議院議員選挙において、一票の較差が最大2.079倍となった小選挙区選出議員の選挙区割りを定めた公職選挙法の規定の違憲性及び選挙無効が争われた訴訟において、原告の訴えを斥け、これを合憲とする判決を言い渡した(多数意見14、反対意見1)1)¶001

多数意見は、先例を踏まえて、「憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求している」が、「投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく……選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている」とし、「衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には……憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められている」が、「それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されて」おり、「具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められて」おり、「このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることにな」ると判示した。そして、「本件選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできない」2)として、原告の訴えを斥けた3)¶002