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Ⅰ 事案の概要

衆議院の小選挙区の選挙制度は、平成28年法律第49号(以下「平成28年改正法」)によって、定数を10削減(小選挙区は6削減の289人、比例区は4削減の176人に)するとともに、各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと、この定数配分の見直しを10年ごとの大規模国勢調査の結果の人口に基づき行うこと、中間年の国勢調査の結果で人口較差が2倍を超える選挙区が生じたときは各都道府県への定数配分はそのままで区画の見直しを行うこととされた(以下ではこれを「新区割制度」という)。また、平成28年改正法は2020年に行われる国勢調査に基づき最初に行われるアダムズ方式による定数配分の見直しまでの措置として、2015年の簡易国勢調査に基づき、0増6減(アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置)とともに選挙区間の較差が2倍未満になるよう区割りの改定を行う旨を定めた。これに基づき、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」)が勧告を行い、それに従い、平成29年法律第58号(以下「平成29年改正法」)は、0増6減を含む19都道府県97選挙区の区割改定を行った。この改定後の区割りが本判決でも問題となった「本件区割規定」である。本件区割規定により行われた2度目の総選挙が、本件で問題となった令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」)である。ここでは、最大較差が1対2.079、較差が2倍を超えている選挙区が29となっていた。本件選挙につき、各地の選挙人らが、本件区割規定が憲法14条1項などに違反し、これに基づく本件選挙の各選挙区の選挙も無効であると主張して選挙無効訴訟を提起したのが本件である1)。高裁段階での判断は、違憲状態との判断と合憲との判断で割れていた2)¶001