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事実

最高裁は、次に引用するような公訴事実を前提に、薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項違反の罪の成否についての職権判断を示した。¶001

「被告人A株式会社(以下『被告会社』という。)は、医薬品等の製造・販売等を営む株式会社であり、被告人B(以下『被告人』という。)は、被告会社の従業員として、D医科大学大学院医学研究科に所属する医師らにより実施された被告会社が製造・販売する高血圧症治療薬X(商品名『Y』)を用いた臨床試験(以下『本件臨床試験』という。)及びその結果に基づいて行うサブ解析又は補助解析について臨床データの解析等の業務を担当していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、(1)補助解析の結果を被告会社の広告資材等に用いるため、本件臨床試験の主任研究者であるE及び同研究者であるFらと共に、高血圧症治療薬であるカルシウム拮抗薬とXとの併用効果に関する本件臨床試験の補助解析論文を記述するに当たり、同論文の定義に基づかないで薬剤の投与群を群分けし、本件臨床試験において確認された他剤投与群の脳卒中等のイベント数を水増しし、統計的に有意差が出ているか否かの指標となる値につき解析結果に基づかない数値を記載するなどして作成した虚偽の図表等のデータをFらに提供し、同人らをして、同データに基づいて、同論文原稿の本文に、英語で、Xを併用ないし追加投与した場合、そうでない場合に比べて狭心症や脳卒中の発生率が有意に低かった旨等の虚偽の記載をさせるとともに同図表等を同論文原稿に掲載させ、Fをして、海外に本店を置く雑誌社が発行する学術雑誌に同論文原稿を投稿させ、同社のホームページに同論文を掲載させて、不特定多数の者が閲覧可能な状態にし、(2)サブ解析の結果を被告会社の広告資材等に用いるため、E及びサブ解析の研究者であるGらと共に、冠動脈疾患を有する高リスク高血圧患者におけるXの追加投与の効果に関する本件臨床試験のサブ解析論文を記述するに当たり、本件臨床試験において確認された他剤投与群の脳卒中等のイベント数を水増しし、同水増しを前提に解析するなどして作成した虚偽の図表等のデータをGらに提供し、同人らをして、同データに基づいて、同論文原稿の本文に、英語で、冠動脈疾患の既往歴がある被験者の場合、X投与群の方が他剤投与群と比較して脳卒中の発生率が有意に低かった旨虚偽の記載をさせるとともに同図表等を同論文原稿に掲載させ、Gをして、海外に本店を置く雑誌社が発行する学術雑誌に同論文原稿を投稿させ、同社が管理するウェブサイトに同論文を掲載させて、不特定多数の者が閲覧可能な状態にし、もってそれぞれ医薬品であるXの効能又は効果に関して、虚偽の記事を記述した。」¶002