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Ⅰ 統制要領発出に至る尖閣諸島をめぐる経緯

日本は、1895年に尖閣諸島を自国に編入する閣議決定をして以来、同諸島は、歴史的にも法的にも日本の主権が及ぶという立場をとる。これに対して、長く沈黙し抗議もしなかった中国は、同諸島周辺の海底に天然資源が賦存するという国連主導の科学機関による報告書の公開後に、同諸島への主権主張を開始した。¶001

2012年に、日本は同諸島の所有権を国に移転した。海上保安庁(海保庁)が常時更新するデータ(https://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/senkaku/senkaku.html、最終閲覧2023年11月12日)によれば、とくにそれ以来、中国の船舶(公船、軍艦、漁船)が、同諸島及び周辺海域への中国の主権主張を誇示するために、恒常的に入域している。直近の2023年8月~10月には、一月に3日~4日のペースで、延べにして8隻~16隻、中国公船等が同諸島周辺の日本領海に恒常的に入域している。海保庁は、国連海洋法条約(UNCLOS)に従い、主に、公船への退去要請という措置をとっている。近年では、主権誇示のための公船の日本領海への入域にとどまらない。日本の漁船に対して、(中国の主権を根拠としてであろうが)「法執行」を行い、追い回すといった行動も伴うようになっている。¶002