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Ⅰ はじめに

国際経済関係を規律するルールは分野毎に多様な発展を遂げている。実物経済については、世界的な自由貿易体制の骨格をなすWTO協定があり、二国間・地域を単位とする多数の経済連携協定(EPA)・自由貿易協定があり、また投資保護の観点から多数の国際投資協定が締結されている。金融分野においても、金融監督に関するバーゼル合意、租税協定その他様々な国際ルールが合意されている。¶001

合意の実施方法も多様である。WTO協定は、加盟国間の紛争を解決するために、強制管轄権を事実上有する司法的な紛争解決手続(DS手続)を備え、EPAのいくつかにも同様の手続が用意されている。国際投資協定は、投資家が投資受入れ国政府の不履行責任を追求するために当該政府に対して直接に仲裁手続(ISDS)を提起することを認めている。ただ、非司法的な手続により遵守を図る方が国際ルールとしてむしろ通例である。遵守確保に司法的手続が不可欠というわけでもなく、バーゼル合意のように、そうした手続がなくても厳格に遵守されているルールもある。¶002