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Ⅰ 論争の背景

アファーマティヴ・アクション(affirmative action。本稿では人種を考慮したものに限定する)は、「差別の解消を実現するための差別的施策という、パラドキシカルな性格」(棟居快行『憲法講義案Ⅰ〔理論演習1〕〔第2版〕』〔信山社、1994年〕26頁)をもつ。そうであるがゆえに、アメリカにおいて厳しい論争点となってきた。¶001

そうしたなか、2023年6月、アメリカ連邦最高裁判所(以下、「最高裁」)は、ハーヴァード大学、ノース・カロライナ大学の入学者選抜に関わるアファーマティヴ・アクションにつき、平等保護条項に適合しないとの判断を下した(ハーヴァード大学のような私学につき、どうして平等保護条項が論じられたのかについては後述)。この判断は、長らく続いてきたアファーマティヴ・アクション論争にかなりのインパクトを及ぼすものとなろう。そこで本稿では、この判決を当該論争の大きな流れのなかに位置づけ、その意義を探っていきたい。¶002