本判決は、地方議会の議員報酬請求権について譲渡性を認めたものである。
事案は次のようなものである。Y(被告・被控訴人・被上告人)の市議会議員Aは、Y特別職の職員の給与等に関する条例の定めるところにより、Yから報酬の支給を受けていたが、Yから受けるべき議員報酬請求権(月毎報酬と期末手当)をBに譲渡し、その旨Yに通知した。Aに対して債権を有するX(原告・控訴人・上告人)は、裁判所より債権差押・取立命令(債権者X、債務者A、第三債務者Y、請求債権400万円、差押債権はAのYに対する議員報酬請求権で400万円に達するまで)を得た。しかし、Yが取立てに応じなかったので、Xは、AからBへの債権譲渡は、将来発生するAのYに対する公法上の報酬請求権を事前譲渡するものであり無効であると主張し、取立命令に基づいて、命令の正本送達日から訴状送達日の前月末日までの報酬と遅延損害金の支払いを求めて訴えを提起した。一審、原審はともに債権譲渡は有効であるとしてXの請求を棄却したためXが上告した。最高裁は、「普通地方公共団体の議会……の議員の報酬請求権は、公法上の権利であるが、公法上の権利であっても、それが法律上特定の者に専属する性質のものとされているのではなく、単なる経済的価値として移転性が予定されている場合には、その譲渡性を否定する理由はない」とした上で、地方自治法、地方公務員法には議員報酬請求権について譲渡・差押えを禁止する規定はないこと、一般職公務員と異なり、公務の円滑な遂行を確保するために(昭和54年改正前)民事訴訟法618条1項5号の趣旨を類推して議員の生活を保護すべき必要もないこと等を理由としてXの上告を棄却した。