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事実の概要

原告らは、Aが経営する小樽市内の公衆浴場に入浴しようとしたところ、3度にわたり、外国人であることを理由に拒否された。同市内ではこの頃にロシア人船員らのグループが公衆浴場に来店して迷惑行為を行い、それによって他の利用客が減少し、廃業する事業者もいたことから、Aは1998(平成10)年8月以降、一律に外国人の利用を拒否していた。原告らは、小樽市に対して状況の改善を求め、小樽市は事業者等に対して外国人に対する理解と協力を求める指導等を行った。原告らはさらに、小樽市・小樽市議会に対して、人種差別撤廃のための条例の制定を求める陳情を行った。これに対して小樽市は、国の法律が整備されておらず、人種差別に対する差止請求権・罰則規定を設ける前提となる具体的な差別行為の特定が困難であることから、条例を制定しなかった。そこで原告らは、①Aによる入浴拒否行為が憲法14条1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)およびあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)等に反する違法な人種差別であるとして、Aに対して不法行為に基づく損害賠償・謝罪広告の掲載を求めるとともに、②入浴拒否行為が行われたのは小樽市が人種差別撤廃のための実効的な措置を採らなかったことが原因であって、小樽市の不作為が人種差別撤廃条約に反して違法であるとして、国家賠償法に基づく損害賠償を求めた。¶001