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はじめに
本稿は、新型コロナウイルス感染症(以下、「コロナ」という)対策のうち、検疫に焦点をあて、パンデミックにおける人権保障の課題を論じる。その際、フランスの判例を参考にしつつ、コロナ検疫法制とその運用の課題を明らかにする。¶001
感染症対策は、感染源対策(水際対策)、感染経路対策(患者からの伝染の防止)、宿主・感受性者対策(免疫獲得)を柱として行われる1)。日本では各局面について、検疫法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)、予防接種法という一般法が定められている2)。このうち検疫法は、海外で感染症が発生したときに、「感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを防止する」(1条)目的がある。検疫は病原体の国内侵入を防ぐことのほか、水際で時間稼ぎをする意義も大きく、とくに島国の日本では検疫への期待が大きいように思われる。しかし、国内での感染症予防に比べて、検疫による人権侵害に関する検討は少ないため、本稿の検討課題とした。なお、本稿では航空機で入国する日本人の帰国の自由に注目して論じる。¶002