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事実の概要

Aは、昭和35年5月3日に、その長男X(原告・控訴人・上告人)との間で、負担付死因贈与契約を締結した。その内容は、Xの在職中はXがAに対して毎月3000円以上と年2回の定期賞与金の半額を贈与するものとし、Xがこれを履行した場合は、Aはその遺産の全部をAの死亡と同時にXに贈与するというものであった。その後、Aは、昭和54年5月10日に死亡した。¶001

ところが、Aは、Xとの死因贈与契約にもかかわらず、昭和49年11月16日付けおよび昭和52年9月22日付けの2通の自筆証書遺言(以下、本件遺言という)において、その所有する財産の一部を次男Y1および三女Y2に遺贈し、その余の財産を妻、X、Y1およびY2の4名が法定相続分に応じて相続し平和裡に遺産分割すること、弁護士Y3を遺言執行者に選任すること等としていた。そこで、Xは、自分はAとの負担付死因贈与契約に従って昭和54年3月31日に会社を退職するまでAに送金を続けてきたから、Aの死亡によりAの全遺産を取得したものであり、したがって本件遺贈は、相続財産に属さなくなった権利についてなされたものであるから無効である等と主張して、Y1・Y2・Y3(以下Yらという)(被告・被控訴人・被上告人)を相手に遺言無効確認の訴えを提起した。これに対し、Yらは、仮にX主張の死因贈与契約が締結されていたとしても、その契約は、後になされた本件遺言によって取り消されたものとみなされる(民法554条による1022条、1023条の準用。現行規定では「撤回」)と主張した。¶002