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事実の概要

北海道松前町の字Pに居住のX女(21歳―原告・被控訴人・被上告人)とY1男(21歳―被告・控訴人・上告人)は、旧知の間柄であったが、昭和26年8月頃交際を開始し、翌年9月頃に将来の結婚を誓いあい初めて情交関係を結んだ。2人は、昭和29年夏頃まで物置小屋や浜辺等で情交を重ねたが同棲はせず、お互いの関係を親兄弟にも打ち明けず、結納の授受もなかった。Y1は、昭和29年夏頃から肝臓病を患い、昭和31年の夏から暮れにかけて治療のため檜山郡Q村に滞在した。その間9月頃Xは、Q村を訪れ、旅館でY1と同衾している。翌月Y1は、Xのいる函館に出向き、このように病弱の体ではとても結婚は考えられないと話したが、Xは同意しなかった。一方Xは、2度妊娠したが、その都度Y1の希望により中絶手術を(Xの主張によれば昭和28年4月と同32年2月に)受けている。病身のY1は、やがてY1の父Y2(被告)の家業を手伝い始め、昭和33年5月頃からXと会うのを避けるようになった。昭和35年3月、Y1がA女と事実上の婚姻をしたため、Xは、Y1が一方的に婚姻予約を破棄しY2がXとの離別をY1に強要したなどとして、Yらの共同不法行為を理由に慰謝料を求める訴えを提起した。1審(函館地判昭和36・9・11民集〔参〕17巻8号947頁)は、離別の強要等はなかったとしてY2への請求を棄却したうえで、正当の理由なくXとの婚姻予約を破棄したとしてY1に10万円の慰謝料の支払を命じた。Y1が控訴。2審(札幌高函館支判昭和37・7・10同民集〔参〕953頁)も、Y1の責任について1審の判断を支持し控訴棄却。Y1が上告。¶001