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事実の概要

Y社(被告・控訴人・上告人)の被用者であるAは、昭和32年4月16日、その事業の執行につき貨物自動車を運転していた際、自車をBの左腕に接触させ、負傷させた。この負傷は、事故直後には全治15週間の見込みと診断されたが、事故後1か月以上経ってから実際には重傷であったことが判明し、結果的には、治療に約17か月を要したのみならず、Bには左前腕関節の用を廃する機能障害が残った。本件は、これによってBに生じた損害につき、Bに約40万円の保険給付を行ったX(国―原告・被控訴人・被上告人)が、労働者災害補償保険法(以下、「労災法」という)20条(現行12条の4)に基づいてYに求償した事案であるが、Yは、次の事実を主張して争った。すなわち、B・Y間においては、昭和32年4月25日、「Bは本件事故により同人が自動車損害保険金により支給される金額〔10万円〕で満足し、これを超えるYに対する損害賠償請求権は一切放棄する」旨の示談が成立したから、Xが保険給付を行っても、Yに対する求償権を取得することはない。¶001